昨年に続き、確定申告期限が延長され、4月15日までとなりましたね。
緊急事態宣言下で無料相談会を中止する地域もある中で、
世田谷区北沢支部は厳戒態勢で無料相談会を開催しました。
私も4日間対応させていただきましたが、かなり受付人数を絞っていたため、
無料相談を受けることができなかった納税者の方も多くいらっしゃいました。
ご要望に沿えなかった方がたには大変申し訳なく思います。
私自身にとっては税理士登録後初めての相談員を経験させていただき、
勉強になったことも非常に多くありました。
今回は、無料相談の中でこれは知っておくべきと感じた、
要支援・要介護と障害者控除の関係についてご紹介したいと思います。
目次
障害者控除とは
概要(所得税法79条)
障害者控除とは、本人または配偶者・扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除のことをいいます。
障害者控除には3つ段階があり、それぞれ控除できる金額は次の通りです。
区分 | 所得控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
※同居特別障害者とは、特別障害者である配偶者・扶養親族で、確定申告をする者と同居している場合に該当します。
障害者控除の対象者(所得税法施行令10条)
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が対象となります。
なお、身体障害については1級又は2級、知的障害についてはA級、精神障害については1級に該当する場合には特別障害者の対象です。
このほかに、障害者控除の対象になるとされている者として次の2要件があげられます。
①常に就床を要し、複雑な介護を要する者
②精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、上記の人たちと同程度の状態であると市区町村長などに認定を受けた者
この辺りが今回の要支援・要介護と障害者控除の関連性を表わす規定ということになります。
要支援・要介護(介護保険法7条)
ここでは簡単に要支援・要介護の定義について触れておきたいと思います。
要支援状態とは、次の2つの場合をいいます。
①身体上・精神上の障害があり、継続して介護状態の軽減や悪化防止のために支援が必要とされる状態
②身体上・精神上の障害があり、継続して日常生活を営むのに支障がある状態
そして、要介護状態とは、身体上・精神上の障害があり、継続して常時介護を要する状態をいいます。
要介護認定ではさらに7段階にわけ、自立に近い方から要支援1・2、要介護1~5と区分されています。
要支援・要介護と障害者控除の関係
上記の定義からわかる通り、要支援・要介護者は身体上または精神上の障害があることが前提となっています。
そのため、要支援・要介護の認定を受けたことで、税法上の障害者控除を受けられると勘違いされることが多々あります。
しかしながら、税法上の障害者控除の対象者は、
各障害者手帳の交付を受けている者が基本的な要件となっているため、
必ずしも要支援・要介護の認定=障害者控除適用ありとはいえません。
そこで障害者手帳の有無による要件ではなく、そのほかの要件に該当するかどうかを判断する必要があります。
そのほかの要件とは、
①常に就床を要し、複雑な介護を要する者、
②精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、上記の人たちと同程度の状態であると市区町村長などに認定を受けた者の2つです。
①は、いわゆる「寝たきり」状態のことをいい、トイレなどの日常生活も介護が必要な方で、
その期間が6か月以上続いていている人のことをいいます。
(所得税基本通達2-39)
②は、要介護認定を受けている方の自治体に申請をして認定を受ける必要があります。
基準については自治体によって異なることもありますので、
まずは自治体に確認してみることをおすすめいたします。
自治体から障害者控除の認定書の交付がされれば、
それをもって確定申告で障害者控除の適用を受けることができます。
世田谷区の場合
ここでは世田谷区の認定基準についてみていきます。
まずは世田谷区のホームページをご参照ください。
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kurashi/003/001/001/002/d00014833.html
基本的には、現状の要介護区分と介護認定時の主治医意見書等をもとに判断がなされ、
要支援の区分でも障害者控除の認定が受けられるようですし、
要介護3以上であれば特別障害者にも該当してくるようです。
もし、認定が受けられなかったとしても何か損をするわけではありませんので、
とりあえず申請をしていただくのが良いのではないでしょうか。
申請時期は、年始~確定申告書を提出する前までとなるでしょう。
申告期限に間に合わない場合には、先に確定申告を行ったうえで、
認定が下りたあとに修正申告(更正の請求)を行っていただくことも可能です。
また、既に本年の申告を終えてしまったかたでも、もちろん認定後に更正の請求が可能です。
おわりに
今回は、実際にご相談があった事例をもとに、要介護認定と障害者控除についてご説明いたしました。
このあたりは、税理士や税務署職員もなかなか質問しにくい領域のため、
納税者の方からご相談をいただけると説明しやすいのかなというのが正直なところです。
それでは何かご不明な点がありましたらぜひご相談ください。