ブログ

2022年12月07日2022年12月07日

ブログ

大人の租税教室

みなさん、こんにちは。世田谷区で税理士をしている井戸川です。

 

 

突然ですが、毎年11月11日~11月17日まで、国税庁が中心となって『税を考える週間』という取り組みをしているのはご存知でしょうか。それに先んじて2022年11月10日に上野法人会と浅草法人会の共催で『大人の租税教室~納税義務ってなんだろう?~』という講演会が開催されていたので参加してきました。

 

 

講師は中央大学教授の酒井克彦先生で、税法界隈では知らない人はいないというほどの著名人です。私は税理士の登録時研修で講演を拝聴する予定でしたが、事情により酒井先生がご欠席されたため、今回は念願の初酒井先生の講演でした。

 

 

税を考える週間の日程をみても分かる通り、本来はこの講演を聞き、即座に記事をあげようと思っていたのですが、あっという間に日は過ぎて税を考える週間もとっくに終わってしまいました(笑)

酒井先生も講演の冒頭で「税を考える瞬間にならないように」と忠告されていたのですが・・・

 

 

さて、私たち税理士は社会貢献活動として小学校6年生を中心に租税教室を行っています。そこでは、税金の集め方も税金の使い方も自分たちで決めているんだよと、税の仕組みを通じて民主主義的なお話をさせていただいています。しかしながら、大人になってみると、恐らくそんなことは忘れ去られているのが現状でしょう。その結果、税金には不満を持ちながらも実際に自分が納めている税額はよく知らないといった現象がおきています。特に会社員で20代30代の若い世代の人たちは、8割超が納めている税金に納得感がないとしながら、6割前後が自分の納税額を知りません。

 

 

ここに税への無関心さが表れているだろうと感じます。

 

 

酒井先生は、租税教育について教育の連続性が担保されていないこと、そして、そもそもの日本人のDNAには税に関する民主主義的決定プロセスを勝ち取った歴史がないことを挙げておられました。

 

 

確かに、小学校の全てが租税教室を行っているわけではなく、また、中学校、高校となるについて開催校数は減ってきます。当然、大学や社会人となって税を改めて学ぶ機会も少ないでしょう。私自身、小学校の時の記憶が鮮明にあるわけではないので、どちらかというと中学校、高校で租税教室をする方が興味関心や将来の記憶には残してもらえるのかなと感じますが、人的リソースも限られる中、多くの学校で授業を行うのは難しいのかもしれません。

 

 

一方で、先日のブログでも取り上げましたが、副業に関する所得区分の通達改正には多くの関心を集めたことは記憶に新しいと思います。恐らくこの通達改正に関心を持ったのは確定申告をしている人たちでしょう。善し悪しはともかくとして自分で確定申告をしている人は税に一定程度の興味関心を持っていることは明らかだと思います。

 

しかし、現在の日本では源泉徴収制度および年末調整制度が発達しており、納税者の大半を占めるであろう給与所得者の多くは確定申告をする義務がありません。反対に企業にとってみれば、年々複雑化する年末調整によって生じる事務負担の増加には悩まされている経営者も多いのではないでしょうか。私は、日本における歴史的な税の仕組み以上に、現在の税制こそが無関心を生む最大の原因だろうと考えています。

 

 

そうすると解決策はおのずとこうなるでしょう。年末調整を簡素化し、確定申告をすべき会社員を増やしていくということです。現在は、年末調整をするうえで扶養、障害、他の所得、生命保険契約など多くの情報を集めることになります。これらはセンシティブな情報も含み、配慮が必要なものも多いです。受け取るまたは提供する情報を限定的にすることは企業と従業員双方にとってもwin-winではないかと思います。従業員にとっては確定申告の手間が増えることになりますが、毎年確定申告を行うことで租税教育の連続性が確保され、リテラシーもはぐくまれるのではないかと思います。

 

 

酒井先生の講演は示唆に富んでいて正に改めて税を考えるきっかけとなりました。酒井先生は話がとても面白く税に詳しくない方でも楽しく聞くことができると思います。私には何の関係もない宣伝となりますが、2023年1月23日にも東京地方税理士会主催で酒井先生の大人の租税教室が開催されます。もし、ご興味があればご参加いただき、租税リテラシーを高めていただければ幸いです。

 

https://www.tochizei.or.jp/symposium/info.pdf?at=r041115

 

コメント