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2022年12月19日2022年12月15日

地方税

非営利法人の法人住民税の納税義務

みなさん、こんにちは。世田谷区で税理士をしている井戸川です。

 

今回は非営利法人の法人住民税の納税義務について整理していきたいと思います。法人住民税には、いわゆる利益に対して課税される法人税割と、赤字でも課税される均等割の2つの種類があります。この2つの法人住民税についてそれぞれの法人格での課税関係の違いについてみていきましょう。

 

営利法人(株式会社等)

まずはじめに、一般的な取扱いとして営利法人の課税関係をみていきましょう。

地方税のややこしさは、(都)道府県民税と市(区)町村民税にわかれ、それぞれの原則的取扱いが地方税法に規定され、さらに租税条例として各自治体でも最終的な課税関係が規定されるというつくりになっていることです。各自治体で特別な規定がある可能性もありますが、とりあえず今回は地方税法の道府県民税を基本として確認していきたいと思います。

 

地方税法第24条1項

道府県民税は、…第三号に掲げる者に対しては均等割額及び法人税割額の合算額により、…課する

 道府県内に事務所又は事業所を有する法人

 

上記規定の通り、株式会社などの営利法人の場合は、各自治体に事務所や事業所がある場合には法人住民税(均等割と法人税割の両方)が課税されるということになります。ちなみに、事務所又は事業所とは何ですかというご質問もあろうかと思いますので念のため書いておきましょう。

 

事務所又は事業所とは

地方税取扱通知(道府県民税関係)一般的事項6

(1)事務所又は事業所(以下6において「事務所等」という。)とは、それが自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所をいうものであること。この場合において事務所等において行われる事業は、当該個人又は法人の本来の事業の取引に関するものであることを必要とせず、本来の事業に直接、間接に関連して行われる附随的事業であっても社会通念上そこで事業が行われていると考えられるものについては、事務所等として取り扱って差し支えないものであるが、宿泊所、従業員詰所、番小屋、監視所等で番人、小使等のほかに別に事務員を配置せず、専ら従業員の宿泊、監視等の内部的、便宜的目的のみに供されるものは、事務所等の範囲に含まれないものであること。

(2) 事務所等と認められるためには、その場所において行われる事業がある程度の継続性をもったものであることを要するから、たまたま2、3か月程度の一時的な事業の用に供する目的で設けられる現場事務所、仮小屋等は事務所等の範囲に入らないものであること。

 

少し長くてわかりにくいかもしれませんが、要約すると、①人がいて、②物があって、③継続して事業が行われる場所が事務所等に該当しますよということになります。また、冒頭にある通り、自己所有物件でも賃貸物件でも上記3要件を満たすのであれば事務所に該当します

 

具体例を出すとすれば、事業のために倉庫を持っていたとしても、そこに常駐する管理者や職員などがいないのであれば事務所等には該当しないということになります。

 

非営利法人(地方税法25条1項2号に掲げる法人)

地方税法25条1項2号に掲げる非営利法人とは、社会福祉法人や宗教法人、学校法人などが挙げられます。定められている法人格は限定的で、多くの公益社団法人・公益財団法人、もちろん一般社団法人・一般財団法人、NPO法人も対象とはなっていません

 

そして、地方税法25条1項2号に規定されている法人については、原則として法人住民税(均等割と法人税割の両方)が課税されることはないが、例外的に収益事業を行った場合には法人住民税(均等割と法人税割の両方)が課税されることになります。

 

地方税法第25条

1項 道府県は、次に掲げる者に対しては、道府県民税の均等割を課することができない。ただし、第二号に掲げる者が収益事業を行う場合は、この限りでない

 日本赤十字社、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人、学校法人、…公益社団法人又は公益財団法人で…博物館を設置することを主たる目的とするもの又は学術の研究を目的とするもの…

2項 道府県は、前項各号に掲げる者に対しては、道府県民税の法人税割を課することができない。ただし、同項第二号に掲げる者が収益事業…を行う場合は、この限りでない

 

その他の非営利法人(上記以外の公益法人等)

地方税法25条1項2号に規定されていない非営利法人として考え得るのは、一部を除く公益社団法人・公益財団法人、一般社団法人・一般財団法人、NPO法人が挙げられます。包括的にいうとすれば、法人税法上の公益法人等から地方税法25条1項2号に規定されている公益法人等を除いた法人ということができます。

 

これらの公益法人等については、法人住民税のうち法人税割については、収益事業にのみ課税することが規定されています。一方で、均等割については、非課税となる規定はなく、また、収益事業に対して課税するという旨の規定もないため、収益事業の有無に関係なく均等割は課税されるということになります。

 

地方税法第24条5項

公益法人等(法人税法第二条第六号の公益法人等並びに…管理組合法人及び…特定非営利活動法人をいう。)のうち第二十五条第一項第二号に掲げる者以外のもの…に対する法人税割…は、第一項の規定にかかわらず、これらの者の収益事業…を行う事務所又は事業所所在の道府県において課する

 

ただし、公益社団法人や公益財団法人、NPO法人については、収益事業を行っていない場合には均等割の免除を受けることができる旨の特例が設けられている場合が多いので、各自治体に確認をしてみましょう

 

ちなみに、均等割の免除に関する記事はこちらからご覧になれますので、ご参照ください。

法人住民税の均等割り免除(2021年4月19日ブログ)

 

人格のない社団等

最後に人格のない社団等についてみていきましょう。人格のない社団等とは、いわゆる任意団体を指しており、任意団体の中でも代表者が規約等で定められている団体のことをいいます。

 

任意団体の法人住民税の取扱いについては、収益事業を営んでいる場合には法人として扱うと規定されています。そのため、原則として、収益事業を行っていない場合には法人住民税(均等割と法人税割の両方)は非課税となり、収益事業を行っている場合には法人住民税(均等割と法人税割の両方)が課税されるということになります。

 

地方税法第24条6項

法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあり、かつ、収益事業を行うもの(当該社団又は財団で収益事業を廃止したものを含む。以下道府県民税について「人格のない社団等」という。)…は、法人とみなして、この節(第五十三条第六十五項から第八十一項までを除く。)の規定を適用する

 

まとめ

というわけで条文を参照しながら法人住民税の課税関係をみてきました。ここまで確認してきたことを整理してみると下記表のようになります。

 

ご覧のとおり、収益事業を行う場合にはどの非営利法人格でも課税関係は変わりませんが、収益事業を行わない場合(非収益事業のみ行う場合)には、公益社団・財団、一般社団・財団、NPO法人は均等割が課税される分、人格のない社団等よりも税務上不利になることがわかります。

 

もちろん、公益社団・財団とNPO法人については免除申請を出せば課税されなくなりますが、手続を忘れると原則課税となってしまうこと、そして、一般社団・財団にいたっては免除規定があるところは少ないと考えられますので、任意団体から一般社団等に組織変更したいと検討されている方は税負担を含めてメリットデメリットをご検討ください。

 

法人格 均等割 法人税割
営利法人 課税 課税
社会福祉法人、宗教法人、学校法人等 収益事業課税 収益事業課税
公益社団法人・公益財団法人、一般社団法人・一般財団法人、NPO法人等 収益事業の有無にかかわらず課税

(公益、NPOは免除規定あり)

収益事業課税
人格のない社団等 収益事業課税 収益事業課税

 

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