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2022年04月18日2022年04月18日

地方税

社会福祉法人等に土地等を無償で貸し付けた場合の固定資産税の非課税

こんにちは、世田谷区で税理士をしている井戸川です。

 

いきなりではありますが全国的に社会課題となっている空き家問題、その中でも特に世田谷区は空き家が多くなっている地域でもあります。そのため世田谷区では、官民連携して「せたがや空き家活用ナビ」という相談窓口を設置しています。空き家として所有しているだけでも土地建物の固定資産税などの費用はかかりますし、使用していないとしても維持のための費用負担は避けられません。

 

そこで、土地等を有効活用できる方法の1つとして、社会福祉法人への無償貸し付けについて、固定資産税の観点からご説明していきます。

 

固定資産税

概要

固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産(土地や建物)を所有している人にかかる税金です。その固定資産が所在する市町村が課税しています。ちなみに、東京23区内にある固定資産については、例外的に東京都が課税しています。

 

税率は、土地等の固定資産税評価額に対して1.4%です。

 

なお、所有する土地が住宅用として使われている場合には、評価額を1/6とする特例がありますが、空き家の場合で「特定空き家」と認定されてしまうと、その減税措置もなくなってしまうことになります。

 

非課税措置

土地建物を所有していると基本的には固定資産税がついてまわってくるのですが、その用途によっては非課税となることがあります。それが地方税法348条2項に定められています。

 

地方税法348条2項

固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。

 

「次に掲げる固定資産」としては58の固定資産が列挙されていますが、わかりやすいところで「墓地」が該当します。なので、ある土地を墓地として使用していた場合には、原則として非課税となり、例外的に課税となる場合もある、というのが上記の条文です。もう少し具体的にみていきましょう。

 

自身が所有する土地を墓地として使用していた場合

この場合、地方税法348条2項の第一文にある課税できない固定資産に該当し、ただし書きの課税される場合には該当しないため、原則通り非課税となります

 

他者が所有する土地を有償で借りて、その土地を墓地として使用した場合

この場合、墓地という非課税用途で土地を使用していますが、ただし書き以降にある「有料で借り受け」て墓地として使用しているため、残念ながら非課税とはなりません。なお、課税されるのは、土地の使用者ではなく所有者です

 

他者が所有する土地を無償で借りて、その土地を墓地として使用した場合

この場合、墓地という非課税用途で土地を使用しており、ただし書き以降にある「有料で借り受け」には該当しないため、原則通り非課税となります

貸し借りの関係性を逆にすると、自身が所有する固定資産を無償で他者に貸して、他者が非課税用途で固定資産を使用すれば、固定資産税は非課税となるわけです。

 

小まとめ

自身で所有する土地を自身で非課税用途に用いる場合に固定資産税が非課税になるというのはわかりやすいですが、他者に無償で貸付けして非課税用途で用いてもらう場合にも非課税になるということは一見わかりにくいですね。

 

このようなことから、土地建物を社会福祉法人に無償で貸すということは、社会福祉法人の活動支援という形で社会に貢献できるとともに、自身の固定資産税負担を減らすというメリットもあり、空き家空き地の活用方法として選択肢の1つに入れても良いのかなと私は思っています。

 

非課税となる用途

ここからは具体的にどのような用途で使用していた場合に固定資産税が非課税となるのかをみていきましょう。とはいっても、非課税用途は58も規定されているため、ここでは社会福祉法人に無償貸し付けする場合に限定して用途をみていきます

 

社会福祉法人以外にも公益社団法人や公益財団法人へ貸付けする場合に適用になる用途も定められていますので、興味がある方は地方税法348条をご覧ください。

 

幼稚園(地方税法348条2項9号)

「その設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産」として園舎や園庭などが該当します。

 

医療関係者養成施設(地方税法348条2項9号の2)

「その設置する医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産」として、例えば、看護師、准看護士、歯科衛生士、歯科技工士、助産師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士の養成施設が該当します。

 

保護施設(地方税法348条2項10号)

「生活保護法38条1項に規定する保護施設の用に供する固定資産」として、救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿泊提供施設が該当します。

 

小規模保育園(地方税法348条2項10号の2)

「児童福祉法6条の3第10項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産」として、小規模保育園が該当します。

 

児童福祉施設(地方税法348条2項10号の3)

「児童福祉法7条1項に規定する児童福祉施設の用に供する固定資産」として、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童館、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センターが該当します。

 

認定こども園(地方税法348条2項10号の4)

「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第6項に規定する認定こども園の用に供する固定資産」として、認定こども園が該当します。

 

老人福祉施設(地方税法348条2項10号の5)

「老人福祉法第5条の3に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産」として、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターが該当します。

 

障害者支援施設(地方税法348条2項10号の6)

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産」として、障碍者支援施設が該当します。

 

その他の福祉施設(地方税法348条2項10号の7)

「社会福祉法第2条第1項に規定する社会福祉事業(同条第3項第1号の2に掲げる事業を除く。)の用に供する固定資産で政令で定めるもの」として、地方税法施行令49条の15第2項をみてみると、1号から9号にかけてさまざまな施設があげられています。

生活支援関連

生計困難者に対する支援施設・診療施設、婦人保護施設、母子・父子福祉施設

障害者福祉関連

介助犬・聴導犬・盲導犬訓練施設、障害者居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援等を行う施設、身体障害者福祉センター、補装具製作施設、視聴覚障害者情報提供施設

高齢者福祉関連

老人居宅介護・デイサービス、短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業等を行う施設

児童福祉関連

ファミリーホーム、自立援助ホーム、放課後等デイサービス等

 

小まとめ

一通り並べてみましたが、入所施設、通所施設、居宅サービス等多くの用途において非課税規定が適用になることがわかると思います。ただ、注意したいのは基本的には福祉事業所等に直接利用される場合に適用になるということです。例えば、事務局などの管理部門の用に供する場合には対象とならないので、どのような用途で使用してもらうかは無償で貸付けをする社会福祉法人へ事前に確認しておく必要があるでしょう。

 

また、ここらで出てくる疑問としては、1つの土地建物で管理部門と福祉事業部門とでそれぞれ用いている場合はどうするのか?や、周辺相場よりも相当程度安い賃料であった場合には適用になるのか?などがあると思います。それらについてはまた後日、ブログを書きたいなと思います。

非課税とするための手続き

既に課税されている固定資産について非課税用途に用いた場合、自動的に非課税となるわけではありません。非課税用途で使うことになったと自治体に申告をする必要があります。

 

東京都では、「固定資産税・都市計画税非課税申告書」と非課税用途に用いている根拠資料として履歴事項証明書、財産目録、設置認可書などが求められるようです。その他、状況に応じて、決算書や平面図等も提出が必要になる場合があります。非課税申告書を提出する前に管轄の都税事務所に確認をとられると良いでしょう。

 

おわりに

少し長くなってしまいましたが、土地等を社会福祉法人に無償貸し付けを行った場合の固定資産の非課税特例についてみてきました。遊休資産をお持ちの方はぜひ社会貢献も含めて利活用をご検討ください。

 

一方で社会福祉法人やその他の非営利法人にとっては、このような非課税特例を知ることによって、必要な施設の確保のためのアプローチ手法が増えることになります。ぜひ非課税特例を有効活用していただければと思います。

 

 

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