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2022年04月25日2022年04月18日

地方税

固定資産税の非課税規定Q&A その1

みなさんこんにちは。世田谷で税理士をしている井戸川です。

先日ブログで社会福祉法人に無償で土地建物を貸し付けた場合は固定資産税を非課税にすることができるとお話ししました。

 

非課税規定の詳細はこちら

 

今回はその続きとして、こんな場合はどうなるの?という疑問についてQ&Aという形でお答えしたいと思います。

 

1つの土地建物につき非課税用途とそれ以外の用途の両方に使用している場合

質問

社会福祉法人に土地建物を無償で貸すことになりましたが、非課税用途だけではなく、法人の管理部門としての事務所用途でも使用することになりました。この場合、固定資産税は非課税となりますか?

 

回答

建物については、非課税用途とそれ以外の用途に区分のうえ、床面積等で按分して固定資産税の非課税部分を計算します。土地については、建物の床面積比率等を用いて非課税部分を計算します。無償貸し付けしている土地建物すべてが非課税となるわけではないので注意が必要です。

 

根拠

上記回答の根拠となる裁判例として「東京地裁平成22年11月30日判決」が参考になりますので確認してみましょう。

裁判の概要

本件は、学校法人Xが所有する土地及び建物に対して、自治体Yから固定資産税及び都市計画税の賦課決定をされたため、Xがその賦課決定の一部は地方税法上非課税とされる固定資産に対してなされたものであるから無効であるとして、納付した固定資産税の一部の還付を求めた裁判です。

 

具体的には、Xが所有する土地の上に、教育棟と商業施設が建築され、これら建築物がない部分として広場が存在しており、この広場に係る土地の固定資産税についての課税非課税が争われています。

 

判決

東京地裁は次のように判示し、納税者の請求を棄却しています。

一般に、家屋の存する土地の用途については、当該家屋の用途に応じてこれを判断するのが相当と解され、また、同条3項の規定の趣旨に照らすと、例えば当該家屋が部分により課税の対象とされる用途と非課税とされる用途とに区分して使用されている場合には、それぞれの用途に使用されている部分の床面積の割合に応じて当該土地もそれぞれの用途に使用されていると解するのが相当というべきである。

 

なお、納税者より控訴されましたが、高裁でも同様に棄却されました。

解説

過去、昭和35年1月30日付けの自治庁固定資産税管理官回答(自治庁固発第13号)においては、一の家屋に非課税とされる用途以外の用途に使用されている部分があっても、それの存する土地につき非課税とする旨記載があったようです。しかしながら、課税実務上は上記回答を修正する考え方が有力であったようで、判決のように建物の床面積の割合に応じて土地の課税区分を決定することが適当であるとされています。

 

もちろんこの考え方が全てということではなく、建物の床面積の割合による方法よりも実態に即した割合があるということであれば検討の余地はあるのだと思われます。ただし、建物について非課税用途とそれ以外の用途が混在している場合には、土地について全てを非課税とすることはできないでしょう。

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