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2022年05月02日2022年04月21日

地方税

固定資産税の非課税規定Q&A その2

みなさんこんにちは、世田谷区で税理士をしている井戸川です。

本日も前回に引き続き固定資産税の非課税規定に関するQ&Aを書いていきます。

今回は「有償」の意味についてです。ぜひご覧ください。

 

固定資産税の非課税規定についての記事はこちら

 

非課税用途とそれ以外の用途の両方に土地建物を使用している場合の考え方についてはこちら

 

地方税法348条2項ただし書きの「有料で借り受けた」とは?

質問

土地建物については使用貸借契約を締結し、賃料は無償としていますが、謝礼の名目で共益費程度の金銭の支払いを受けることになっています。

賃料として受け取っていなければ固定資産税非課税の対象となりますか?

 

回答

非課税の対象とはなりません。支払いを受ける名目や金額に関わらず、固定資産の貸付けに対する対価と考えられる場合には有料で貸し付けたことになります。

 

根拠

上記回答の根拠となる裁判例として「最高裁平成6年12月20日判決」が参考になりますので確認してみましょう。

 

裁判の概要

東村山市は、市民が利用できるテニスコート等の運動施設を設けるため、土地をその所有者から借りることにしました。その際、借りる土地については固定資産税を非課税にしたうえで、土地3.3㎡当たり1か月50円の報償費を支払う旨を提案し、土地所有者と合意に至りました。なお、通常の賃料相当額は1か月500円~1,373円であり、固定資産税額は1か月100円~200円程度と算定されています。

本事案は、東村山市民が東村山市長に対して、固定資産税を非課税としたのは違法であるとして住民訴訟に至ったものです。

 

判決

最高裁は次のように判示しています。

法348条2項は、そのただし書において、固定資産を有料で借り受けた者がこれを同項各号所定の固定資産として使用する場合には、本文の規定にかかわらず、固定資産税を右固定資産に課することができるとしているところ、ここでいう「固定資産を有料で借り受けた」とは、通常の取引上固定資産の貸借の対価に相当する額に至らないとしても、その固定資産の使用に対する代償として金員が支払われているときには、これに当たるものというべきである。

 

この考え方は基本的には第一審、控訴審の考え方に同意したもので、裁判所では一貫して「有料で借り受けた」と認定しています。

 

解説

東村山市長は、本契約は使用貸借契約であることや、報償費として支出している金額も固定資産税額よりも低額であることから、地方税法348条2項ただし書きに規定する「有料で借り受けた」ことにはならないため、非課税規定の除外事由にはあたらないと主張していました。

 

たしかに、固定資産税よりも低額のお金しか受け取っていない場合、固定資産税を納付することで経済的には赤字となり、課税するのがかわいそうと考えることもできるかもしれません。控訴審では、「金員の額が取引上その固定資産の貸借の対価に相当する額に至らないものであっても、それが社会通念上無視し得る程度に少額である場合を除き、なお有料で借り受けた場合に当たると解するのが相当である。」と判示しており、極めて少額である場合には有料には当たらない場合もあると解釈することもできるように思います。

 

その金額がいくらなのかというのは線引きの難しいところですが、本事案のように固定資産税の4分の1程度の金額であっても有料であると認定されるということは1つの判断材料となるでしょう。

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