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2021年01月29日2021年03月08日

所得税

成年被後見人の確定申告

みなさま、こんにちは。世田谷区で税理士をしている井戸川です。

ホームページを開設してからなかなかブログに着手できず1か月近く放置してしまいました。

本当は情報発信もこまめにしていきたいと思っているのですが・・・

 

さて、年も明けまして、確定申告の話題が多くなってきましたね。

税理士もブログやYOUTUBEなどでさまざまな視点から情報を発信しています。

私はその流れに完全に乗り遅れてしまいましたが、ちょうど先日、成年後見人の研修を受けてきまして、

税金の話も少し出てきていましたのでここでご紹介したいと思います。

 

成年後見人とは

昨今の高齢化が加速する日本では、認知症などにより判断能力が不十分な高齢者の方の支援体制が社会課題となっています。

例えば、福祉施設を利用したいのにその契約の締結ができない、

または、不必要で高額な商品を営業員の言うがまま購入してしまうなどが考えられるでしょう。

このような高齢者の方の支援をする仕組みが成年後見制度です。

成年後見制度では、当事者本人のことを成年被後見人、支援者を成年後見人といいます。

 

成年後見人の役割は大きく2つ、身上保護と財産管理です。

もし、成年被後見人が賃貸不動産を所有しているなどで収入がある場合には、

成年被後見人の確定申告を行うことも財産管理業務の1つということができるでしょう。

成年後見人としては、本当は申告が必要なのに申告をしていなかったとか、

よくわからず申告してしまい余計に税金を支払っていたということがないよう気を付けたいですね。

確定申告の注意点

事前手続き

郵便物の郵送先変更

確定申告のお知らせなどの税務署から届く郵便物を成年後見人の住所に送ってもらうことが可能です。

例えば、中間納付がある場合などは納付書が手元に届かないと忘れてしまいがちです。

それ以外にも大事な郵便物が多いため、郵送先を変更しておくと安心でしょう。

郵送先を変更は、『納税管理人の届出書』を提出することで可能となります。

書類については下記をご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/07.htm

 

登録銀行口座の変更

確定申告をして納税が生じる方の多くは、納税は口座引き落としの手続きしているのではないでしょうか。

成年後見人制度を利用する場合には、銀行口座の名義に成年後見人の氏名を追加登録されると思いますが、

従前から口座引き落としの登録をしている場合には、名義人相違で引き落としエラーとなってしまう可能性があります。

このようなときは、改めて引き落とし口座の登録手続きをする必要があります。

手続き書類は、『預貯金口座振替依頼書兼納付書類送付依頼書』となります。

手続きには1か月程度かかるため、申告の前に確認しておくとよいでしょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24100020.htm

 

住所・氏名について

確定申告書の第一表には、申告者の住所・氏名等の基本情報を記入する欄があります。

ここには、成年被後見人と成年後見人のどちらの情報を書けばよいのでしょうか。

 

住所と氏名については、併記する必要があります。

具体的には、住所は2段書きができますので、

上段に成年被後見人の住所を、下段に成年後見人の住所を書くことになります。

また、氏名については、成年被後見人の氏名を書いた後ろに「成年後見人〇〇〇〇」と書きましょう。

 

なお、申告書への押印は成年後見人の印鑑を押すことになります。

そしてそれ以外の基本情報については成年被後見人の情報を書きましょう。

 

不動産収入がある場合

不動産賃貸をしている場合、通常は共用部分の管理や入金管理などの業務が発生します。

これらの業務を誰に依頼しているかによって、経費になるのかならないのかが変わってきますので注意が必要です。

 

①不動産管理会社に依頼している場合

不動産管理会社へ支出している管理手数料は全額が経費になります。不動産管理会社から送られてくる明細表などを確認しましょう。

 

②家族に依頼している場合

成年被後見人になる前から家族に仕事を手伝ってもらい専従者給与としてお給料を支払っていた場合、

その同額までは変わらずに経費にすることができます。

ただし、成年被後見人になった後にその家族に依頼する仕事量が増えたからといってお給料の額を勝手に増やすことはできません。

その家族に支払うお給料の額が適正額であるかの判断が困難であると想定されるため、まずは家裁に相談すると良いでしょう。

また、家裁への相談の結果、お給料の増額が決定した場合でも安心してはいけません。

専従者給与を増額する場合には、税務署に届出が必要です。

『青色事業専従者給与に関する変更届出書』という書類に所定事項を記入の上、管轄の税務署に提出しましょう。

※白色申告の場合には、一定額の事業専従者控除という制度があります。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/13.htm

 

③成年後見人が後見業務の一環として不動産管理している場合

成年後見人は後見にかかる報酬として家裁に決められた金額を成年被後見人から後見報酬として受け取ることができます。

そのため、成年被後見人からみればこの後見報酬は不動産管理の経費と言えないこともないですが、

後見報酬は後見業務全体をみて決定されるものであり、不動産管理部分の報酬が明確とはいえません。

したがって、不動産収入に対する経費とすることはできません。

ただし、例えば、共用部分の蛍光灯交換のための費用など実費部分については経費とすることができます。

 

株式配当金がある場合

所得税の確定申告

上場株式の配当金は、配当金を受け取る際に所得税15%と住民税5%が天引きされているので、基本的には確定申告は必要ありません。

ただ実は、確定申告をすることで有利になる場合も多いのです。

具体的に次の要件を満たす場合には有利になると思ってよいでしょう。

・株式の売買損がない

・課税所得が900万円未満である

 

確定申告をする場合、配当金について分離課税にするか総合課税にするかを選択することができます。

上記の要件に該当する場合には、総合課税を選択しましょう。

総合課税を選択すると、配当金の10%相当が配当控除として減税され、

また、所得税率は所得金額に応じて高くなっていきますので、

その税率が低ければ当初天引きされている15%よりも低くなる場合がでてくるわけです。

住民税の確定申告

通常、住民税は所得税の確定申告に連動します。

そのため、所得税の確定申告で総合課税を選択した場合、それは自動的に住民税にも反映されてしまうことになります。

住民税の税率は、所得税とは異なり原則として一律10%となっていますから、

当初天引きされていた住民税5%よりも税金が高くなってしまいます。

そして、住民税だけでなく、介護保険料や後期高齢者医療保険料などにも影響を与えます。

 

そこで、所得税の確定申告とは別に、住民税では配当金は収入として計算しないでくださいという申告をするわけです。

自治体によっては、『配当金申告不要申出書』などのように専用の書類が用意されている場合もありますが、

例えば世田谷区の場合は、『特別区民税・都民税申告書』を提出することで、配当金を計算から除外することができます。

世田谷区での手続きは、配当金欄に金額等を記載したうえで、申告不要にチェックを入れれば大丈夫です。

その申告書とともに、配当金通知書や特定口座年間取引報告書のコピーを添付して提出しましょう。

障害者控除について

成年被後見人に該当する場合には、税法上は特別障害者とみなされ、40万円の所得控除が受けられます。

※ご参考(国税庁の見解)

なお、被保佐人や被補助人である場合には、そのことをもって障害者とはみなされないため、

障害者手帳を有しているかどうかや、手帳の交付申請を行うなどして、障害者控除が受けられるかどうかを判断する必要があります。

 

医療費控除について

一般的な医療費はもちろんのこと、介護サービスに関する費用についても医療費に含めて申告できるものがあります。

例えば、介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設に支払う施設サービスの自己負担額は原則として全額医療費になりますし、

指定介護老人福祉施設(いわゆる特養)への支払いについても半額は医療費に含めてよいことになっています。

なお、特養から発行される領収証には医療費控除の対象となる金額が記載されているはずなので見逃さないようにしましょう。

施設サービスに限らず、居宅サービスにおいても医療費控除の対象とできる支払いもありますが、

なかなか書ききれないボリュームですので、税務署のホームページのリンクを貼らせていただきますのでご覧ください。

これ見てもよくわからないよ!という方は税理士・税務署にご相談ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1127.htm

おわりに

以上、成年被後見人の確定申告で生じやすいかなと思うことを色々とあげさせていただきました。

もちろん一般的な確定申告と同様その他にも注意すべき点はたくさんあります。

年1回で期限の決まっていることでもあるので、なかなか手間をかけるのも難しいかもしれませんが、

成年被後見人の財産管理において本人のベストインタレストを追求していきましょう。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

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