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2022年08月19日2022年08月19日

所得税

副業収入の所得区分

こんにちは、世田谷区で税理士をしている井戸川です。

突然ですが、みなさんは副業をしていますか?

昨今の副業が当たり前、むしろ推進されている環境下で、国税庁が副業に関する税制度の解釈を明確に打ち出しました。

巷では結構話題となっており、既にご存知の方も多いかと思いますが、今回は私なりの見解を交えてご紹介したいと思います。

 

副業とは

副業とは、「主な仕事以外に就いている仕事」などと定義され、メインの収入以外の補完的な収入源とされています。

近年では、「複」業と漢字を変え、メインとサブではなく、収入の柱を複数持とうという考え方もあります。

いずれにしても、収入源が2つ以上ある場合には、副業をしている人と捉えられるでしょう。

副業のパターンはいくつか考えられます。

 

①給与+給与・・・2か所以上の会社で掛け持ち勤務をしている

②給与+事業・・・会社員のほかに勤務時間外に事業をしている

③事業+給与・・・個人事業のほかに空き時間でアルバイトなどをしている

④事業+事業・・・複数の種類の個人事業をしている

 

上記のパターンの中で、「事業」としている部分について、所得税法では事業所得なのか雑所得なのかという議論があります。

今回はそれに関する国税庁の解釈についてのお話です。

 

なお、給与の場合には、それがメインの収入であってもサブの収入であっても給与所得になります。

また、副業の内容が不動産賃貸収入の場合には不動産所得に該当し、株式投資である場合には、譲渡所得(分離)や配当所得に該当するため、所得区分が変わるということはありません。

 

事業所得と雑所得

なぜ、事業所得と雑所得のどちらに該当するのかという議論が出てくるのかというと、事業所得と雑所得では課税のされ方が異なるからです。

基本的には事業所得の方が何かと有利なわけですが、違いについてここでおさらいしてみましょう。

 

損益通算制度

所得税法では収入を10種類に区分しますが、そのうち不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得については、赤字が出た際には他の所得の利益と相殺することができる制度があります。

そうすると、事業所得と給与所得があった場合には、事業所得の赤字と給与所得の黒字を相殺し、給与から天引きされていた源泉所得税の還付を受けることができます。

一方で、雑所得の場合は赤字が出ても他の所得区分との損益通算ができません。

 

青色申告制度

事業所得と不動産所得には青色申告という制度があります。

事業所得の場合には、申請書を提出したうえで、一定の帳簿等の作成を行い確定申告することで、10万円~65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

青色申告特別控除とは、お金は支出していないけれども経費として認められる金額と考えていただければよいでしょう。

また、青色申告にはその他にもさまざまな特典があり、事業所得として申告される方の多くが青色申告をしています。

一方で、雑所得には青色申告の制度はありませんので、それらの特典も受けられないことになります。

 

副業の所得区分

上記でも少し触れたように、副業については事業所得なのか雑所得なのかという議論があります。

ここからはどのように所得区分を判断していくかを検討していきましょう。

 

法令の定め

まずは所得税法の定めを見ていきましょう。

 

所得税法27条

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

 

所得税法施行令63条

法27条第1項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(不動産の貸付業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする。

中略

12号 前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

 

所得税法35条

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

 

事業所得については、いくつかの業種が列挙されているものの、最終的には、所得税法施行令の「対価を得て継続的に行う事業」に該当するのかどうかが判断基準となってきます。

そして、雑所得については、ほかのどの所得区分にも当てはまらないのであれば雑所得になるという消去法的な考え方をとっています。

なので、いきなり雑所得になるかどうかを考えるというよりは、まずは事業所得になるかどうかを考えて、事業所得でないのであれば雑所得になりますねというのが法的な検討手順になります。

 

国税庁の解釈(所得税基本通達)

所得税法をみても分かる通り、事業所得になるかどうかの要件が具体的ではなく、人によって解釈が変わってくるという問題が生じます。

その解釈が各税務署で異なったり、税務署の中でも職員によって異なったりすることは公平性に欠けるので、税務署内では解釈を一律にしようというのがこの基本通達というものです。

なので、あくまでも基本通達は納税者を縛るものではなく、税務署職員を縛るものであるということは念頭に置いておきましょう。

 

この基本通達の改正案が現在公表されており、そこには雑所得に該当する副業について例が示されています。

 

所得税基本通達35-2(改正案)

事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。

 

なお、改正が決定されれば令和4年分の確定申告から適用となります。

 

通達改正案への評価はさまざまです。

私が見聞きする限り、学者は批判的、実務家は明確にしてくれてありがたいと思っている方が多いのかなと感じます。

そもそも、この改正案がでてきた経緯を推察するに、会社員の過度な節税策として「副業で赤字を出して給与所得と相殺する」行為が横行していることがあるでしょう。

そのため、基本的には過度な節税を取り締まるのが主眼にあるのかなと私は思っています。

とはいえ、通達が改正されるとなれば、税務署職員はだれかれ構わず一律にこの通達を持ち出し指摘してくることも想定されます。

私の実務的な対応としても、お客様へのリスク説明として、税務署はこう言ってきますよとこの通達を示すことになろうかと思います。

また、通達の改正がなされなかったとしても、税務署としての方針がこの改正案で示されたというべきでしょう。

 

通達改正案の検討

この通達で示されていることは次の2つです。

 

①大前提

事業所得といえるかどうかは、その事業(副業)を「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか」で判断する。

 

②具体例

②-1その事業所得が主たる所得でない②-2その事業収入が300万円以下である②-3反証がない、この3つ全てに該当するのであれば雑所得に区分する。

 

大前提は今までの考え方を示したものです。

これについては別で記事を書きたいなと思っていますが、ここでは割愛します。

つまるところ曖昧で基準がよくわかりませんよね。

そこで、税務署としては形式的に②の方法でチェックしていきますよと言っています。

では、②についてさらに詳しく見ていきましょう。

 

②-1.利益基準

「その所得がその者の主たる所得でなく」がどの数字を比較すべきなのかは定かではありませんが、「所得」は一般的には「利益」を意味するため、利益ベースで比較するものと思われます。

例えば、事業収入と給与収入がある場合には、それぞれその利益を比較して事業収入に係る利益の方が少なければ、この要件に引っかかるということです。

さらにいえば、事業所得における利益とは、青色申告特別控除「前」の金額を指すものと考えられ、給与所得における利益とは、給与所得控除「後」の金額を指すものと考えられます。

 

②-2.売上基準

「その所得に係る収入金額が300万円を超えない」の収入金額とは売上を指します。

これは、他の収入との比較ではありません。

副業に関する売上が300万円以下の場合にはこの要件に引っかかります。

 

②-3.反証の有無

「特に反証のない限り」と通達改正案では補足されているので、上記2要件のいずれも満たさない場合であっても、すぐに雑所得と判断されるわけではありません。

では、具体的に反証とはどんなことかといえば、大きくは2つでしょう。

まずは、利益が他の収入源よりも少なかったことや売上が300万円を超えなかったことについて、それが一時的なものであることを客観的に説明できるかどうか。

または、売上や利益は少ないけれども、大前提である社会通念上事業と称するに至る程度で行っていると客観的に説明できるかどうか。

これらの説明で税務署職員に納得してもらえれば、この通達の適用はないと考えてよいでしょう。

ただ、後者で納得してもらうのは結構ハードルが高いと思われますので、まずは前者で反証を考えるのがベターでしょう。

 

また、いつ反証しなければならないのかについては、確定申告時に、確定申告書および決算書に補記することもできるでしょうし、税務調査に入られたときに反証をするということも考えられます。

基本的に税務署が処分をする際には税務調査が行われますし、行政指導であってもお尋ねが届きますので、いきなり処分されることはありません。

 

なお、もう1つ重要なのは、上記の基準を満たしたからと言って、事業所得であると認められるわけではないということです。

大前提で述べているように、そもそも事業所得に該当するかどうかは、「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」のであって、売上が300万円を超えていたとしても、裁判等で事業所得と認められなかった事例は多くあります。

あくまでもこの通達改正案は明らかに雑所得といえるものを例示したのであって、これに該当しない場合でも雑所得として認定されるものもあるということは頭の片隅においておく必要があります。

 

おわりに

ここまで副業収入に関する所得税の取り扱いについて、所得税基本通達改正案から税務署の対応方針の明確化についてお話ししてきました。

税務署の解釈についてさらに解釈するというのはナンセンスな気もしますが、税務署の考え方を理解することも非常に大事なことです。

正式に改正されるかどうかはまだ決まっていませんが、これをきっかけに適正な納税申告について考えてみてもらえると良いのかなと思います。

 

 

 

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